借りぐらしのアリエッティ 感想 ~これは小人と人間の物語~

2010年7月17日公開『借りぐらしのアリエッティ』観てきました。
ネタバレになりますのでまだご覧になってない方はご注意を。

劇場前売券の特典に付いている「ミニ本」にはキャラクターの当初からの設定画が描かれております。
最初は全くの別人ですね(笑)。だんだんと髪型も変わっていき、最後に完成版となる過程がよく分かります。カラーの絵コンテ画ですので、映画を観終わってから見てみると作中では使用されていないカットが多いことも分かりますね。

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ファンタジー作品であるが、冒険活劇のハラハラドギドキの物語要素は少なめ。日常生活を主に描く中で、小人族と人間との隔たり、その中で種族を超えた絆を結んだアリエッティと翔の出会いと別れの物語であった。

【翔は愛情に飢えた孤独な少年】
ジブリ作品のヒロインと関る主役の男キャラは、好感の持てるキャラクターであることが多いのですが(例外は『ゲド戦記』のアレンか!?)、翔は小人の生活を脅かす存在そのものでした。翔にしてみれば、好意的に手伝いをしただけなのですが、それはあくまで人間の基準。アリエッティと別れることになったのも彼の行動が原因であったことを知らされることになって、ようやくアリエッティの目線で考えることかできたのであった。
翔の人柄が良くなったと感じたのは後半からでした。翔は心臓の手術を控えて静養中の身であったのです。母は仕事優先、父は離婚していない。自身の身を心配してくれる友達もいないようす。そして作中に彼の母親は登場しませんでした。誰かに頼られることのなかった彼は、アリエッティの為に懸命になります。弱い心臓を抱えての行動は、一般人にはたいしたことはなくとも、翔にとっては命をかけた行為だったのです。

【滅びゆく種族の運命に立ち向かう少女】
翔から指摘される小人族の運命。家族の愛情に包まれて育ったアリエッティにとって、暗い未来は想像できないものであった。数少ない種族で生き続けることの不安を抱かせる翔の言葉であったが、アリエッティはそれでも生きる希望を捨てずに前向きでした。それは支えてくれる家族や仲間がいることを信じているからでもあるのですが、その姿に翔が憧れたのです。翔には考えられないことをアリエッティは教えたことになりますね。
畏怖なる存在の人間に対し、正面から立ち向かったアリエッティの強さ。人と初めて接したことにより、古くから守られつづけた掟への改革を彼女が担っていく予感を残している。

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【借りぐらしとは、人への依存関係】
原作もあらすじも知らないままの観賞で、タタイトルの意味が分かってなかったのですが、“借りぐらし”の意味が物語の中で分かった時、物語のテーマも見えたような気がしました。
小人と人間は、“人”であるのです。生活様式も、文化も、思考も言語も同じ生き物なのである。
人間が作り出したものを“借りて”くらしているアリエッティの家族。人間に見つかる事なく、存在を隠し続けていなければならないのは、人との共存ができない戒めを守り続ける為でもあるような気がします。
人間からの恩恵を受けている小人であるのだが、小人が人間に対してしていることとは? 幸をもたらす……わけでもなく、縁の下で家を守る……わけでもない。言葉が通じ合うのに人間へ恩を返すことはない!?

人間の作り出し、捨てていったもの……アリエッティの家にある家具やキッチン、道具など、人間が作った物を利用しており『ホッタラケの島』を彷彿させる手作りさであった。

【見所は背景】
物語の世界はとある一軒家であるのだが、小人にとってそこは都市やダンジョンがある大きな世界。
“借り”に出かけるアリエッティと父のシーンは大きな見所である。
子供目線と人間目線とを切り替えるカメラワーク、キャラクター作画の丁寧さはジブリらしさが感じられる。
人から見れば雑草でも、小人から見ればジャングルなんですね。その違いの描写が楽しめます。
そして、人からは見えない家の中は、ダンジョンそのもの。不思議空間をアニメーションで演出しております。
主な登場人物も少なく、モブキャラといえるのは害虫駆除屋の2人ぐらい。アリエッティが住む世界の魅力は、芸術作品並に描かれた背景に表れているといっても過言ではない。

【それぞれの進む道】
アリエッティとの出会いで生きる意志を固めた翔ですが、再びアリエッティと出会うことはないかもしれない。
それでも生きていれば、また会える可能性が残るのだ。死ぬとあきらめていた翔であるが、今は1人ではない。彼の心にはいつまでもアリエッティが居続けているのだ。
新たな世界(住まい)へ旅立っていくアリエッティ一家。そこにはまだ見ぬ仲間がいる。人間との出会いで精神的に成長したアリエッティに迷いや不安はありませんでした。スピラーとフラグ立ち? と思わせながらボーイフレンド候補には……まだまだ眼中外といったアリエッティ(笑)。しっかり者のお姉さんといったところか。

【スピラーはアリエッティに一目惚れ?】
彼が小人族の最後の少年ならば、アリエッティとの婚約話にまで進んでいたでしょう(苦笑)。
彼を見た第一印象は『未来少年コナン』に登場したジムシィ。野性的な自分とは対照的な匂いをするアリエッティに気があるようですが言葉せず態度で表している。アリエッティは好感は抱いていても……翔という人間との出会いの方がインパクトがありすぎましたね。ラストで恋敵に弓を向けるスピラーでありましたが、なぜ矢を放たなかったのか? それはアリエッティが彼と親しくしていたから。人間は敵であるという認識があったにも関らず、アリエッティを助けたいと思うのなら迷わず矢を放って助けに行っても不思議ではなかった。しかし、彼はアリエッティの表情から悟ってしまったのです。潔く身を引いたスピラーですが、これでは将来現れるかもしれない小人族の恋敵にも同じことをして諦めてしまいそう……しかし、さりげなく野イチゴをプレゼントする辺り可愛い奴なのです。

【お別れのプレゼント交換はお約束?】
『魔法少女リリカルなのは』のなのはとフェイトのリボン交換といえば、アニメ作品の名シーンのひとつですね!
アリエッティはリボンではなく洗濯バサミで髪留めをしているのですが(最初はリボンかと思ってましたけどw)、翔にあげるために髪をほどいたシーンは、なのはとフェイトのシーンと被ってしまい感動の頂点に! 交換したのは、角砂糖と洗濯バサミですが(笑)、冒頭での角砂糖イベントを最後に伏線で使う粋な計らいが素敵です。


【総括】
ジブリらしいといえばジブリらしかった。原作ではもっとアリエッティの冒険談が書かれているかもしれない。
少し調べてみたが原作では

床下の小人たち
野に出た小人たち
川をくだる小人たち
空をとぶ小人たち
小人たちの新しい家

とタイトルが発表されている。
映画は『川をくだる小人たち』の冒頭までを描いているようである。
この後に待ち受ける苦難の旅も気になるところであるが、今回は小人と人間との関係をテーマにしており、立ち向かっていく強い少女を描いたアリエッティの活躍は心が躍ることであろう。
しかしながら、『千と千尋の神隠し』には及ばない……といったところか。アリエッティと翔とが信頼し会える関係を築いたところまでで、2人が触れ合っていく時間を割いており、ヒロインが1人だけ目立ちすぎているのだ。翔やスピラーのキャラクター設定をもっと活かせることができなかったのか? 魔女と人間との出会いを描いた『魔女の宅急便』ではヒロインを取り巻くキャラクターがしっかりと物語をつくっていたからだ。観終って見ると“もう終わってしまったの?”と、完全燃焼できなかった感がある。
キャストはメジャー俳優を揃えているだけでなく、キャラクターの特徴にあった人選。キャストとキャラクターの顔を似せているのがいかにもジブリらしい。




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